物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

アウラ・純な魂 カルロス・フエンテス

短編集。

耽美、若さを失う事への恐れ、エロス、幻想など。夢幻的な要素も多いけど、おどろおどろしくはなく、都市の中に幽かに見える常ならぬものの気配という感じ。洗練されている。フエンテスがメキシコ育ちではなく、ワシントンで教育を受けた事に機縁しているのかもしれない。

「最後の恋」「純な魂」「アウラ」が良かった。

 最後の恋

ある金持ちの年取った男が休暇で女を買って、その女を通して自分が歳を取った事、自分の手元には何も無い事を憂う。女の若さを羨ましいと感じるがそれも束の間の輝きに過ぎないと感じている。冒頭のシェービングシーンが繊細で美しい。

純な魂

兄弟愛の話。妹が一方的に語るので兄の本当の気持ちは分からない。

妹の愛は強く、揺ぎ無く、純粋である故に、兄の堕落を許すことができない。

アウラ

タイトルが良い。作品の神髄を表している。

永遠の時を生きる美少女を呼ぶのに相ふさわしい名前。響きの美しさの中に、

 掴み切れない謎を内包している。美とエロス、愛。フエンテスの耽美主義が発揮された傑作だと思う

 

”もっと食事に気をつけなければだめよ。まだ27だというのに、40男みたいじゃない。今どんなものを読み、何に心を奪われているの、ファン・ルイス。まさかクロスワードパズルじゃないでしょうね。お願いだから自分を裏切るような真似だけはしないでね、・・・早くアパートに帰って、靴下を脱ぎ、新聞を読みたい、そんなことばかり考えているんでしょう。・・・自分を破滅させてはいけないわ。・・・私たちに愛、知性、若さ、沈黙以外の何ものかになるようにと求めてくるものがあるけど、そういうものを断固として撥ねつけなければいけないわ。まわりの人たちは私たちを変えて、自分たちを同じ人間にしようと考えているの。私たちを許せないのよ。” 純な魂

 

”授業はだんだんくだらなくなって、単調な繰り返しに終始するようになった。文学なんて、本来教えようがないのよ。いくつかの作品を読んでみて、結局はひとりでやってゆくしかない、自分の考えで本を読み、ものを書き、勉強するしかないということに気がついたの。” 純な魂

 

”君はようやく、波のように打ち寄せ、泡立ち、静まって緑色になり、ふたたびふくれあがる海のような彼女の目を見るだろう。” アウラ