物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

カメラ・オブスクーラ ナボコフ

これがあのナボコフ!?と思うくらい読みやすかった!! ナボコフが30代で、ロシア語で書いていた時の作品。
言葉から広がっていくイメージの世界の範囲がまだ狭く、すっきりしているので、ストーリーだけに焦点を当てて読み進める事ができる。ナボコフといえば、評論家の方々がやれ言葉の魔術師だと評し、彼が小説の中で技巧を凝らす表現と、それが意味するものばかり語られがちだけど、私は、彼の書くストーリーも好き。ああ、大好きよ。
カメラオブスクーラは、後の彼の代表作「ロリータ」の原型ともなるような話で、若くて顔だけが綺麗な少女に振り回される中年の男が主人公だ。彼がナボコフの手のひらに乗せられて、破滅へと向かっていく様を楽しむことができる。

本物の人生、ずるがしこくて抜け目なく、筋肉質の蛇のような人生、ただちに息の根を止める必要のあるあの人生はどこか別の場所にあるのだがーそれはどこか。わからない。