物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

2009-01-01から1年間の記事一覧

供述によるとペレイラは アントニオ タブッキ 1994 イタリア

自分の魂に忠実に生きることはどういうことなんだろう。 この物語の主人公のペレイラが考えているのもずっとそのこと。

視る男 アルベルト・モラヴィア 1985 イタリア

35歳の大学教授を勤める主人公。彼は専ら日常を“視る”(覗き視る、洞察する)ことで生きている。最近父親が交通事故に遭い、妻のシルヴィアは「あなたは私とセックスする時に私に聖母を求めるけれども、私は雌豚のようにセックスしたいのよ」という理由で少…

セバスチャン・ナイトの真実の生涯 ナボコフ 1941 ロシア(アメリカ)

「水中の青白い砂の上に宝石が輝いているように見えるので深く肩まで腕を突っ込んだ後で、にぎりこぶしのなかに発見するただの小石は、日常的な日の光に乾かされると小石のように見えるけれども、本当は垂涎ものの宝石なのだという事をぼくは知っている」 人…

贖罪 イアン・マキューアン 2001 イギリス

かつて、自分がついた嘘、(正確には嘘ではないんだけれども)によって一組の恋人をひき裂いた少女。恋人達は、その後の戦争(第二次大戦)で再び結ばれることなく死んでしまう。小説家志望だった少女は、小説家になって、物語を書く。はたしてその行為は贖…

アラビアの夜の種族 古川日出男 2001 日本

物語の長さを憂える者よ、その物語が結び合わさって、めくるめく恍惚を紡ぎだしてくれる様を想像してみるがよい。素晴らしいな。途中の話も大変面白く読みましたが、最後、創りだされた本が制作者を超えて、語られていた物語が、聞きての今に繋がって云々か…

遠い家族 カルロス・フエンテス 1980 メキシコ

小説の書き手である「私」が友人にあって、彼から奇妙な体験談を聞く所から話は始まる。その話は、始まりは普通なのだが、徐々に、徐々におかしくなっていく。あれ、段々日常がゆっくりと静かに歪んでゆくぞ。ぎりぎりぎり。彼の体験談は終わり、「私」はそ…

13 古川日出男 1998 日本

エピソードの全てを回収しきれていない気はするけれど、それは処女作ということで。 読み始めたときは、話が全体として肯定の側へいくのか、否定の側へいくのかが分からず、手探りでどっちだろなーと探ってた。根底に流れているのは希望だったので読後感は良…

巨匠とマルガリータ ミハイル・ブルガーコフ 1929〜1940,1966 ロシア

政治的な色っていうものは、どうしたって、その当時を生きてなければガツンと伝わってこないけれど、おもしろさは残ってく。 はちゃめちゃ。この本はハチャメチャです。悪魔によって、小市民が翻弄されていく様は映像を思い浮かべるだけで、笑ってしまう程面…

俘虜記 大岡昇平 1948 日本

大岡さんは観察者だ。観察して観察して、なぜ米兵を殺さなかったかを見つめ、捕虜収容所の人々のチンケな性格を見つめる。そして同時に、常に客体であって主体になれない観察者の哀しみを抱えているように思う。

虚無への供物 中井英夫 1964 日本

悪い意味での「求めよされば与えられん」。 殺人を求める気持ちが殺人を生む。