物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

遠い家族 カルロス・フエンテス 1980 メキシコ

小説の書き手である「私」が友人にあって、彼から奇妙な体験談を聞く所から話は始まる。その話は、始まりは普通なのだが、徐々に、徐々におかしくなっていく。あれ、段々日常がゆっくりと静かに歪んでゆくぞ。ぎりぎりぎり。彼の体験談は終わり、「私」はその体験の後に彼がとった行動を更に聞く。彼は体験の元になった考古学者に会いにゆき、考古学者から話をきく。その考古学者の「この話は誰にもしないで下さい。さもなければ災いがおこります。」という話を彼は「私」に話す。「私」はこの小説の書き手カルロス・フエンテスである。そして、「私」がこの小説を書いている。という事は、読み手もまた、この話の引き受けてであるということだ。
小説は別の小説につながっている。全ての話は未完である。というフレーズが文中にあり、この小説もまた、分からない事があって、それはあくまで分からなくて、ぼんやりしつつ、時折片鱗らしきものをちらっちらっと垣間見せながら、おかしい世界へ、おかしい世界へ進む。
最後のプールサイドに佇む少年が現れて、ブランリー(私が出会う友人)が溺れかけるシーンと、一つに合体した二人の少年が老人のような風貌でプールの水に浮いている所は、おぞましくて、けれど素敵な、符号がぴたりとはまるような、いいシーンだと思う