物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

春を忘れた島 マイクル・ゴールディング

ラストはなかなか悲惨で悲しいが、話は牧歌的に淡々と進んでいく。そしていつのまにか全滅と。
謎の美少女ミリアムという人が登場するが、そのキャラクター造形がおもしろい。大抵、こういう形式の物語においては謎の美少女の内面は謎か分けが分からないままなのだが、この話においては生身の人間なのである。考えている事だけを抜き取ったら別に美少女という描写はいらないぐらい。それは、透明になってしまう、占い師少女ピアリーナもしかりで、『お母さんを殺したい』という(あの情況下なら)普通の感情が描かれている。そう、この話には感情的、気質的に本当に特別な人は出てこない。変わっていても理解できる人が出てくる。太った少女(名前失念してしまったエルメネジダ?)と野菜を育てるアルベルティーノの恋の鞘当ても楽しいし。
だからこそ最後が余計に悲しいのだと思う。エルメネジダがピアリーナに『さよなら』をいうシーンは泣いてしまった。
そして生き残る3人。きっと歴史的にも、生まれながらに免疫を持った人が必ずいてこうやって生き残ってきたのだと思った。