物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

奇跡も語る者がいなければ ジョン・マグレガー 2002 イギリス

甘い。何が甘いかというと、語り口。平易な感じの優しい連続的な文章がその感じを増長させている。ただ、これは訳の問題かも。
何気ない日常を生きる人々の中にも、大切な毎日があって、都会で孤独といわれるけれど、でも、つながってもいて、そんな中でおきる奇跡のような大事な小さな出来事。報道はされないけれど。(こんな感じの文体だ)という事が描きたいという作者の意図は分かる。そのテーマ自体は素晴らしい。でも、こんな風に要約出来てしまう事が逆に限界なのではないかと思う。一つに収縮していくのならば、わざわざ長い文章にする事はないもの。過去のある一角の住んでいた住民の話と、現在の私の話とがきちんと交互にならんでいって、最後の仕掛けに向かうという小説の構造としての部分はよく出来てるし、普段あまり本を読んでない人には捻りが効いてておもしろいかもしれない。
しかし、きらきらした砂糖がまぶしてあるようだった。悪いわけじゃないけれど、この感性が通じる相手は乙女、少女なのでは。でも、それは訳の問題かも。