物語と手をつないでく

読んだ本について書いています。海外小説が多いです。

睡蓮の教室 ルル・ワン 1997 オランダ,(中国)

中国。文革の時代を背景にした少女の話。少女が第二次成長を向える時の、自分の体を嫌だと思う気持ち、男の子を嫌う気持ち。同性を好きになる気持ち、それから、人と人の結びつき、パワーゲームの関係が描かれていると思う。蓮は、女の子らしくない、ある種…

恥辱 J.M.クッツェー 1999 南アフリカ

自己分析をしている男がいる。“他人と同居できずに、2度の離婚を経験した。自分には人がありふれてもっている情愛が欠けていると。けれども、性欲は処理したいから、娼婦を買っている。うまくいっている。けれど、そろそろ初老の域に入ってきた。かつては、…

カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー 1880 ロシア

時々無性に世界の名作が読みたくなる時がある。 制覇したぞ。 小説の構造は第三者の私が記述している視点(そんなにおおっぴらにならないが)があったり、時世が登場人物ごとにずれていたりと、意外と凝っているので、すらすら読めるけれど気をつけていない…

奇跡も語る者がいなければ ジョン・マグレガー 2002 イギリス

甘い。何が甘いかというと、語り口。平易な感じの優しい連続的な文章がその感じを増長させている。ただ、これは訳の問題かも。 何気ない日常を生きる人々の中にも、大切な毎日があって、都会で孤独といわれるけれど、でも、つながってもいて、そんな中でおき…

人間喜劇 ウィリアム・サロイヤン 1943 アメリカ

物語の主軸となるホーマー家の話もよいが、あいだあいだに挟まれる短い話がおもしろい。 ホーマー家の話だけを読むと道徳的な善の側面を美しく書くだけの作家のように思うかもしれないが、この村の市井の人の話と弟ユリシーズの話が挟まれていて、もっと多面…

春を忘れた島 マイクル・ゴールディング

ラストはなかなか悲惨で悲しいが、話は牧歌的に淡々と進んでいく。そしていつのまにか全滅と。 謎の美少女ミリアムという人が登場するが、そのキャラクター造形がおもしろい。大抵、こういう形式の物語においては謎の美少女の内面は謎か分けが分からないまま…

天使の記憶 ナンシー・ヒューストン 1988 フランス

今回の1冊は、新潮社クレストブックからの1冊です。ミステリアスな心を閉ざしたメイドと結婚したフルート奏者、そして妻はある日夫の知人の楽器修理職人と激しい恋に落ちてしまう。という帯の説明を読んだ時には、ちょっと謎解き的な要素もあるのかなと思い…

丁庄の夢 閻 連科 2006 中国

中国のエイズ村の話。政府の身勝手な対応と、農民の愚かしさが哀しい。民衆の目先の利益しか考えていないその姿が、人ごと、他人の国の事とは思えなくて怖かった。彼らを愚かなままにしておくと、楽なのはそれを統治する側だから。

オーランドー ヴァージニア・ウルフ 1928 イギリス

人間も年をとると昔を回想する事が多くなるように、この本も後半部分は回想というか心象シーンが続く。そこはちょっとつらかったけど、全体的に面白かった。一読では分からない、理解しきれない部分があるので何度か読んで見たい本。 「歓喜(エクスタシー)歓喜(エクス…

フリアとシナリオライター マリオ バルガス=リョサ 1982 ペルー

途中、ちょっと建築の本に浮気してしまったが、その後は一気に読めた。 ペドロのラジオのシナリオと、フリアと僕の話が交互に進むのだが、フリアと僕の進展が早く読みたくてペドロのラジオシナリオを急いで読んでいたらいつのまにかペドロのシナリオに心を奪…

愛の続き イアン・マキューアン 1997 イギリス

上手な本。構成は考え抜かれているし、人物の心象描写は痒い所に手が届くよう。細かい心のヒダがネチネチと描かれている。そして、最終的に表面に表れる文章はここに至るまでの苦労をまったく感じさせず、ツルツルッとしてて読みやすい。 読みやすいけれど、…

ガタラの豚 中島らも 1993 日本

電車乗り越しました。しかも朝の通勤の電車を。 つまり、この本はエンタテイメントという事だね。一気に読みたい。 しかし、人が死ぬ、死ぬ、死ぬ。秋山ルイ先生まで死んだのは哀しかった。 バキリはなんで、あんなに人を呪いたがっているのかねー、それは最…

ダンス・ダンス・ダンス 村上春樹 1988 日本

はじめての村上春樹。 文章はとても読みやすかった。この読みやすさとセンチメンタリズム(だけど深そう)なのが大勢の人に支持された理由かな。 村上春樹の本は読みやすいわりに、その内容は難解で云々といったような評論を読んだけど、 そうかなぁ〜、そん…

夜ごとのサーカス アンジェラ・カーター 1984 イギリス

主人公の女性が背中に翼が生えてる割にはそんなに活躍するわけでもなく、金に目が眩んで失敗したりしているのが不思議な感じだった。羽が生えてるけど、普通の女性。 サンクトペテルブルクでのサーカス団の様子−ミニヨン、アビシニアの女王と虎、そして、怪…

ミドルセックス ジェフリー・ユージェニデス 2002 アメリカ

うん。この話は青春小説だ。例えば『百年の孤独』とかを期待してこの小説に取りかかるとなんだか面白いけれど、少し浅い所がある。と思うかもしれない。でも、カリオペの思春期についての話としてみるととてもしっくりくる。最後には希望も残されているし。…

アウステルリッツ W・Gゼーバルト 2001 ドイツ,(イギリス)

こっちの方が面白かった。語り口が端正でとても綺麗。読めない漢字(けど、意味は分かる)が幾つかあったのが悔しい。 しかし、ユダヤ人迫害(ホロコースト)という問題はヨーロッパ人の間に深く根をおろしているんだなぁと嘆息する。この二冊の本は急に本が…

コーヒーの水 ラファエル・コンフィアン 1991 (マルティニーク島),フランス

マルティアック島という太平洋にある島の話し。 久々にこういうマジックリアリズム的な構成の話しを読んだので最初は少し混乱した。後書きに著者インタビューがあって、彼がそこで語っている島と黒人奴隷の歴史と現状を奇想天外な物語に置き換えるという事に…

ダロウェイ夫人 ヴァージニア・ウルフ 1925 イギリス

「めぐり合う時間たち」という映画の元ネタになった小説。映画を見た時はこの小説を読んでみたいと強く思ったわけでは無かったが、その後本屋でたまたまみつけて冒頭を少し読んで、面白そうだなと思い、いつか読んでもいいかなぁと頭の片隅に置いておいた所…

マノン・レスコー アベ・プレヴォー 1731 フランス

椿姫にでてきた物語。 この本は非常に読みやすい。なぜなら、描かれている感情が一つしかないからである。恋の激情 その感情しか書かれてない。それだけで成り立っている物語。 話しの構成も単純で、主人公二人のやっている事は、一緒に暮らす→なにか事件が…